105kg級 葛西昌彦選手が326kg日本記録で大逆転勝利！！

男子一般105kg級は、葛西選手、佐藤選手、山下選手の三つ巴の戦い。この三つ巴の戦いは3年連続である。

佐藤選手はK’s GYM横浜を任され、山下選手は8sukigymを立ち上げたものの全員がK’s GYM本店の出身ということで実質的に同門対決。

お互いに挙がる重量、手の内を知り尽くしているため勝負の運び方が難しい。

第1試技

葛西選手が300kgを難なく成功。

佐藤選手は、葛西選手よりも体重が不利のため2.5kgかぶせた302.5kgでスタート。ベンチシャツがきつすぎるため不安定な状態となり、挙げで失敗をしてしまう。

山下選手は、今回最も良く仕上がっている。3人中最も体重が軽いがスタートは一番高く、310kg。練習動画では非常に安定感があり、型ができていると感じられる重量での試技であったがフィニッシュでバランスを崩し、落としてしまう。山下選手ほどの安定感のある選手でも練習ではありえないミスが出てしまうのが試合の難しさである。

第2試技

第1試技を唯一成功させた葛西選手は山下選手の第1試技にかぶせた312.5kgを選択。軽く挙がるがフィニッシュでバランスを崩し失速してしまい失敗となる。

第1試技を落としてしまった佐藤選手は、第1試技と同重量の302.5kgを申請し。軌道修正をし、見事に成功。暫定2位につける。

山下選手も第1試技と同重量の310kgを申請をし、これを軽く挙げて成功。

3者とも優勝を狙っているものの、成功した葛西選手は他の選手の第1試技にかぶせ、失敗した両選手は同重量を着実に取るというパワーリフティングの基本の重量選択を行っている。チャンピオンクラスでも基本が大切であることがうかがえる。

第3試技

第2試技までの暫定順位、体重、ロット番号は以下の通りである。

暫定1位 山下選手：310kg 101kg #194

暫定2位 佐藤選手：302.5kg 103.85kg #196

暫定3位 葛西選手：300kg 103.75kg #190

※重量 体重 ロット番号の順

4位以下の追い上げが無いため3者の順位は3位以上で確定。

定石通りロースコア勝負(試技の確実性を増すため優勝記録をできるだけ落とす重量選択。)にする場合、葛西選手、佐藤選手は312.5kgを成功させ、山下選手の失敗を待つ。しかし、310kgがあまりにも軽い上がりのため312.5kgでは低すぎる。かと言って、320kg以上は挙がらないリスクが増大する。ロースコア勝負での妥当な重量は317.5kgと思われる。

ここで重量の読み合いの膠着状態を破るために最初に仕掛けたのは暫定1位の山下選手。325kg一般日本新記録を申請。相手の挙がりを見て、挙げられる重量を予想、それ以上で自身が挙げられるギリギリの重量を選択。失敗しても暫定1位の状態は残る。非常に賢い重量選択である。攻める方が挙がるか守りの方が挙がるかは選手によって得意不得意がある。ギリギリの高重量では精神的に戦いやすい方が成功確率は上がる。山下選手は、325kgを見事成功させ、2者を大きくリードする。

佐藤選手は、山下選手よりも体重が重いため325.5kgの日本新記録を申請。途中まで挙がるものの残念ながらフィニッシュまで挙げることができず失敗する。

葛西選手は、重量の駆け引きに関係なく必ず最後の試技者になることを希望した。暫定3位であるので失敗しても順位は変わらない。2位はいらないとなるとこの選択肢に限られる。しかし、直前の練習が思わしくなかったためコーチ陣には不安がよぎる。佐藤選手がすでに325.5kgを申請してしまったためロット番号が佐藤選手より前の葛西選手は326kg一般・M1日本新記録で試技を開始。ギリギリの挙がりであったが白2本がつき、成功。会場は大きな歓声と拍手につつまれた。

フルギアは、誰が優勝するか最後まで分からず、技術力と精神力により順位が入れ替わることがよくあり、重量が競っている時ほど見ごたえがある試合展開となるのが最大の醍醐味である。

 

 

男子一般105kg級は最も層の厚い階級

葛西選手は、この優勝で全日本ベンチ二連覇となる。優勝を目指した3者の戦いは本大会で3年連続となる。誰が勝ってもおかしくない状況で葛西選手が2勝、山下選手が1勝している。48歳、マスターズであっても果敢に重量を攻め、優勝をもぎ取った葛西選手の勇気を讃えたい。

来年度も三つ巴の戦いが予想される。4位以下の選手の突き上げ、いきなり強い選手が現れることもあるため一般男子105kg級は優勝のためのハードルが非常に高い階級であると言えよう。

 

大会結果

スコアシート

大会写真

 

※写真は第1試技を中心に撮影しましたので記事内の掲載位置とズレがあります。ご了承ください。